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環境倫理関係

[ 原典で読み解く環境思想入門 ― グリーン・リーダー ]
アンドリュー・ドブソン編(松尾眞・ 金克美・中尾ハジメ訳)

分野 環境 - 環境政治 難易度 初心者向け(教養課程学生向け)
出版社 ミネルヴァ書房 発行年月 1999年6月
値段 3,500円+税 ISBN 4623030105
ページ数 328ページ 判の大きさ A5判

本書は社会学、政治学、経済学、環境倫理など様々な分野の環境問題についての重要著作ないし論文の抜粋を収録している。取り上げられている著書ないし論文のなかには、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』(1962)やギャレット・ハーディンの「共有地の悲劇」(1968)、アルド・レオポルドの『野生のうたが聞こえる』(1949)などの有名な著作の重要箇所だけでなく、重要ではあるが未邦訳の論文(例えば、ソーシャル・エコロジーで有名なマレイ・ブクチンの「エコロジー運動への公開質問状」やディープ・エコロジーの提唱者アルネ・ネスの「浅いエコロジーと深く長期にわたるエコロジー運動。一つの要約」、環境倫理学者リチャード・ロートリーとヴァル・ロートリーの「核エネルギーと未来への責務」など)からの抜粋もある。

編著者のアンドリュー・ドブソンは、本書の序文で、「一方で、現在の政治経済システムの批判に基づいて環境問題の分析をおこなうと共に、他方で、政治的経済的な変革を進めるための一連の提案をする」(p. xi)“Green”あるいは“グリーン派の政治”を提起している。この立場が目指す持続可能な社会は、環境問題を作り出してきた社会への反省とその政治・経済システムの変革によって実現される。本書に収録の抜粋はすべて、この編著者の定義する“Green”あるいは“グリーン派の政治”の一般的理念を共有している著作ないし論文からのものである。

また、本書に所収されている各論稿の冒頭には、編著者による短い紹介が掲載されている。抜粋掲載されている箇所は論稿の要点を記述する部分に絞られているが、この紹介は著作あるいは論文をめぐる背景知識や歴史的経緯、グリーン派の政治との関係を適切に解説している。

このように、本書は環境倫理だけを扱った著作ではないが、読者は環境問題についての多くの重要な議論に短い文章で手短に触れることができるので、環境問題に広い関心を持つ学生の副読本として最適である。(本書と同様に、海外の環境研究の重要論文を日本語で読める文献としては、クリスティン・シュレーダー=フレチェット編『環境の倫理』晃洋書房、1993年が挙げられる。)