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環境倫理関係

[ 環境政治理論 ]
丸山正次

分野 環境 - 環境政治 難易度 上級者向け(大学院生向け)
出版社 風行社 発行年月 2006年10月
値段 3,100円+税 ISBN 4938662736
ページ数 352ページ 判の大きさ B6判

環境倫理と環境政治学あるいは緑の政治学(Green Politics)は、まったく違う研究分野であると思われるかもしれないが、両者がほとんど同じ主張を展開することもあれば、基本概念や見解を共有していることも多くある。環境問題の解決は両者の共通の目的でもあるし、環境についての政治的決定には環境についての価値観が関わると考えるなら、このことに違和感はないかもしれない。しかし、前者がディープ・エコロジーや自然の価値の強調のような、個人の生き方や形而上学的な真理の追究から環境問題にアプローチしてきたのに対して、後者は環境問題の解決を政治的課題と考える。環境倫理は本書ではひとつの考察対象に過ぎないが、環境政治学が環境倫理をどのように批判的に検討し、環境倫理の問題をどのように乗り越えようとしてきたのかについて、海外の議論を詳細に交えて論じている。この点で、本書は『環境政治理論』という書名でありながら環境倫理にも興味深い論点を展開している。

環境倫理の議論が大きく取り上げられているのは第一章と第五章である。第一章では、環境政治学者アンドリュー・ドブソンの議論のディープ・エコロジー批判について論じられている。本章では、環境倫理としてのディープ・エコロジーが行い損ねた社会変革を実行する理論として「政治的エコロジズム」を構築したドブソンの一連の議論が説明されている。

第五章は、人間と自然との関係を独自に考察してきたひとつの分野として、エコフェミニズムを取り上げている。エコフェミニズムは、環境倫理の教科書では必ず紹介されるものの、他の議論に比べて敬遠されがちである。この立場は、一般的に人間による環境の破壊と女性の社会的地位の軽視には同じ構造があり両者は一緒に解決されなければならないと論じる立場として知られているが、本章ではさらに詳しく、脱構築主義エコフェミニズムと社会主義エコフェミニズムという二つの立場について詳細に論じられている。

このように、本書は、ディープ・エコロジーやエコフェミニズムなどの環境倫理の議論が他の研究分野に与えた影響、他の研究分野からの環境倫理の批判的評価、そして最新の環境政治学のトピックを知るのに多くの情報を提供してくれる一冊である。