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環境倫理関係

[ 環境哲学の探求 ]
小関周二編

分野 環境 - 環境哲学 難易度 中級者向け(専修課程学生向け)
出版社 大月書店 発行年月 1996年11月
値段 2,500円+税 ISBN 4272430505
ページ数 262ページ 判の大きさ B6判

本書は、哲学・倫理学の研究者たちによる環境哲学の論文集である。そのため、本書に収録されている論考は、環境問題についての事実確認や環境倫理の議論の紹介にとどまらず、われわれ人間の自然観や社会システム、科学という自然環境の破壊に寄与してきた近代から根強く続く思考の批判的考察から環境問題にアプローチしている。

日本語で書かれる環境倫理についての著作や論文集には、教科書としての利用を意図して環境倫理の難解な議論を噛み砕いた簡単な解説書にとどまっているものが多い。そのため、環境倫理や環境哲学を「哲学」研究として批判的に吟味しているものは少ないように思える。その反面、本書は近世哲学やマルクス主義哲学の議論も多く交えて、環境問題をひとつの哲学的問題として論じている。本書を一読すれば、環境問題は単に経済活動による自然環境の破壊という問題であるだけでなく、われわれの自然についての認識、人間や社会の自然に対する態度、科学的思考と環境破壊との関係の解明、自然との関係についての意識についての問題でもあるということが理解できるだろう。

本書に収録されている論文は、様々な哲学の観点から「自然環境」へのアプローチを展開している。そのバリエーションは、デカルトに代表される機械論的な世界観、資本主義による自然の支配、ジョン・ロックの所有概念、和辻哲郎の風土論、フェミニズムなど多岐に渡る。これらは一見したところ現代の環境問題とは無関係のように思われるかもしれないが、本書の著者たちはそれぞれの論文のなかで、こうした思想的な背景と環境破壊あるいは環境保護との関係を巧みに説明している。このように、本書は環境問題についての理論的な考察に重点を置いているわけだが、その一方で、いくつかの論文では、ダム建設によって絶滅危惧種の生息地が破壊された米国のテリコ・ダム事件や、リサイクルと廃棄物処理、デンマークの環境政策などの事例研究も取り上げている。また、本書の末尾には「環境哲学を考えるための文献リスト」が掲載されている。

以上のような特徴から、本書は教養課程の学生向けの教科書としては少々難解かもしれないが、教養課程の哲学・倫理学の講義を受講した学生用の副読書としては十分な内容である。