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環境倫理関係

[ 環境と倫理 ― 自然と人間の共生を求めて(新版) ]
加藤尚武編

分野 環境 - 環境倫理 難易度 初心者向け(教養課程学生向け)
出版社 有斐閣アルマ 発行年月 2005年11月
値段 1,800円+税 ISBN 4641122660
ページ数 283ページ 判の大きさ B6判

環境倫理の議論を分かりやすく簡潔にまとめた教科書である。環境倫理の概説から個々の論点まで幅広く網羅されており、1998年に出版された初版から内容が大幅に変更されている。第1章で編者は、環境倫理には「地球の有限性」、「世代間倫理」、「生物保護」という3つの主張があると説明しており、各章はこれら3つの主張のどれかを扱った論文で構成されている。

第1章と第2章では、環境倫理とはどういった学問なのかということについて論じられている。第1章は経済学やリスク評価と環境倫理の考え方の違いを強調し、第2章は人間中心主義と人間非中心主義、自然の内在的価値と道具的価値、生命中心主義、生態系中心主義といった環境倫理の古典的な議論を説明し、こうした実際の環境問題の解決には役立たない形而上学的な議論の反省として環境正義と環境プラグマティズムを取り上げている。

第3章からは環境問題の各論とその倫理的問題が論じられている。第3章は、石油埋蔵量を事例として、有限な資源の枯渇と持続可能性について論じている。次の第4章では、環境問題の原型としての「公害」を再評価するというテーマの下で、水俣病事件について詳しく解説している。第5章では環境正義について触れられ、筆者は南北格差やグローバリゼーションといった地球規模の観点から説明している。他の章のテーマも、動物倫理や保存/保全の対立、京都議定書などであり本書の射程範囲は広範に及ぶ。

本書全体を通じては、ただ単に様々な環境問題の簡単な解説とその倫理的問題の指摘にとどまるのではなく、それと同時に倫理学の専門用語についても分かりやすく説明することで、環境倫理の教科書で蔑ろにされがちな環境問題と倫理学との関係を分かりやすく説明していることも優れている点に挙げられるだろう。文章も平易であり教科書としての使用を念頭に出版されていることから、学部生の講義やゼミの参考資料として最適の一冊と考えられる。