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環境倫理関係

[ 自然への介入はどこまで許されるか ― 事例で学ぶ環境倫 ]
クリスティン・R・グドーフ/ジェイムズ・E・ハッチンソン(千代美樹訳)

分野 環境 - 環境倫理 難易度 初心者向け(教養課程学生向け)
出版社 日本教文社 発行年月 2008年6月
値段 2,190円+税 ISBN 9784531015566
ページ数 400ページ 判の大きさ B6判

環境問題の事例を物語形式で紹介し環境倫理を論じるという珍しい教科書。第1章で生命中心主義、生態系中心主義、ディープエコロジー、ソーシャルエコロジー、エコフェミニズム、環境プラグマティズム、エコロジー神学といった環境倫理の代表的な立場とその問題点ついて簡単に説明した後、第2章以降で、様々な環境問題を取り上げてその倫理的問題について解説するというスタイルをとっている。

取り上げられている事例は、どれも実際に起こった環境問題や現実の科学技術にまつわる事例であり、野生動物の保護とその関係者間の対立、危険化学物質の規制に対する先進国と発展途上国の考え方の違い、熱帯雨林の保護のために立ち退きを強制される現地コミュニティの文化と伝統が消滅してしまう問題、高レベル放射性廃棄物の最終地層処分と未来世代へのリスクの転嫁、農家が遺伝子組換え作物の導入を躊躇する理由など、現代の環境問題の中でも人々の関心の高いテーマが多い。各章でこれらの事例研究は、地域住民や科学者、環境NGOなど利害を持った登場人物たちの議論や論争などを交えた物語形式で解説されているので、読者は環境問題の現場を想像しながら環境問題と環境倫理を学ぶことができる(取り上げられている環境問題は実際の事例だが、登場人物や団体のやり取りはあくまで架空のものである)。

このような物語形式の教科書は、冒険的かつ挑戦的な試みである。環境倫理は、自然環境の価値の解明や環境を保護する理由の提起および分析には大きく頁を割いてきたが、実際に環境問題の現場にいる人たちの価値観や意見、利害関係についてはそれほど大きく取り上げてこなかった。しかし、本書はフィクションを通じて環境問題の現場の利害関係者が抱えるジレンマや価値観の対立を生々しいほどに描いている。こうした特徴から、本書は哲学や倫理学の学生に環境倫理の教科書として読んでもらうだけではなく、環境社会学や環境経済学、環境(地域)政策学、生態学など幅広い分野の学生にも読んでもらい、ケーススタディを通じて環境問題の現場と専門研究との関係を考えるきっかけにしてほしい一冊である。