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環境倫理関係

[ シチズンシップと環境 ]
アンドリュー・ドブソン(福士正博・桑田学訳)

分野 環境 - 環境政治 難易度 中級者向け(専修課程・修士課程学生向け)
出版社 日本経済評論社 発行年月 2006年12月
値段 3,800円+税 ISBN 4818819085
ページ数 290ページ 判の大きさ B6判

本書は、環境問題の解決における市民の責任という環境政治学の問題とシチズンシップ概念の再構築という政治(哲)学のテーマを体系的に関連づける試みである。本書の全体を通して著者は、先進国の経済活動が地球規模で環境に影響を及ぼすという事実に対応して、その責任を果たすエコロジカル・シチズンシップの議論を展開している。

本書の中核をなすのは、既存のシチズンシップ理論の限界とグローバルな問題にも対応できる新しいシチズンシップ概念の提起という政治学の理論的考察である。著者によると、シチズンシップの理論には「自由主義的シチズンシップ」と「市民共和主義的シチズンシップ」という二つの代表的な類型がある。前者は「個人」と「権利」を、後者は「共通善」と「義務」を強調する点で両者のシチズンシップは異なるが、両者は、市民の権利と義務が国家との互恵的契約に基づき、公的領域と一致し、同一の政治領土の成員資格と結びついているという点では共通している。しかし、こうした従来のシチズンシップ概念は、地球温暖化のような地球規模の環境問題を解決する責任には対応していない。というのも、この種の環境問題は、先進国に主な原因があり、先進国がその恩恵を享受し、同国ではない異国の見知らぬ人たちや未来世代に一方的に影響を及ぼすからである。それゆえ、地球規模の環境問題を解決する義務は、善きサマリア人のような慈善行為からは基礎づけられえないし、果たさないことが不正になるような強い義務でなければならない。著者はこうした片務的で、私的領域にも存在し、非領土的で、見知らぬ者との関係から生じる義務を伴うポストコスモポリタン・シチズンシップを提起し(第1章・第2章)、それを環境政治に特化したエコロジカル・シチズンシップの概念を展開している(第3章~第5章)。

このように、本書は環境政治学の専門書であるが、多くの環境倫理の研究を引き合いにしている。例えば、第4章「自由主義社会における持続可能性」では、近年の環境倫理の議論で頻繁に取り上げられている、ブライアン・バリーとブライアン・G・ノートンの持続可能性の問題が論じられている。また、翻訳も非常に丁寧であり、環境倫理の環境政治学への影響などといった幅広い問題に関心を持っている学生の期待に十分応える一冊である。