環境倫理関係
[ 環境の思想家たち(上・下) ]
ジョイ・A・パルマー編(須藤自由児訳)
分野 | 環境 - 環境思想 | 難易度 | 初心者向け(教養課程学生向け) |
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出版社 | みすず書房 | 発行年月 | 上2004年9月/下2004年10月 |
値段 | 上下各2,800円+税 | ISBN | 上462208161X/下4622081628 |
ページ数 | 上312ページ/下328ページ | 判の大きさ | B6判 |
本書は、自然環境や環境問題について論じた歴史上の人物や研究者についての解説書である。本書には50人の人物についての解説が収録されているが、そのバリエーションは哲学者や科学者、作家、活動家など多岐に渡る。しかし、本書で取り上げられている人物には、今日の環境保護や環境保全への社会的関心に強い影響を与えた重要人物であるという共通点がある。
環境倫理の分野で著名な人物としては、ジョン・ミューアやアルド・レオポルド、リン・ホワイトJr.、アルネ・ネス、ジョン・パスモア、ホームズ・ロルストン三世、ヴァル・プラムウッド、ジョン・ベアード・キャリコット、ピーター・シンガーなどの有名な研究者が挙げられる。これらの人物について説明は、ひとりにつき約10ページ程度にまとめられ、その内容も、生まれや家庭環境、学歴や若い時の体験といった将来の活動に影響を与える背景についても触れられており、彼らの後年の核となる思想や主著との繋がりが分かりやすいように解説されている。
また、あまり環境倫理では見かけないアリストテレスやジャン・ジャック・ルソー、マルティン・ハイデガーなどの哲学者も収録されている。こうした哲学者の解説は、哲学史や個々の哲学者についての多くの優れた入門書を越えるものではないが、彼らの思想や著作が今日の環境問題への高い関心に与えた影響という独特の視点から解説されているのは面白い試みである。それゆえ、哲学にあまり関心のない読者にも馴染みやすいだろう。他にも、レイチェル・カーソンやE・F・シューマッハー、マレイ・ブックチン、ポール・エーリックなど、今日の環境破壊やエコロジー運動を語る上で欠かせない重要人物についても簡単にまとめられている。
このように、本書には環境運動や環境思想の著作で一度は目にしたことがあろう人物が一通り収められているが、解説も翻訳も非常に丁寧なので、どちらかというと教科書というよりも「読み物」に近い。また、それぞれの人物の重要著作や関連文献について各章末に参考文献表が付され、読者が関心を持った人物についてさらなる学習に着手するきっかけとなる情報を提供している。