生命倫理関係
[ 生命倫理への招待 改訂三版 ]
塩野寛・清水惠子
分野 | 生命 - 入門 | 難易度 | 初心者向け(教養課程学生向け) |
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出版社 | 南山堂 | 発行年月 | 2007年3月 |
値段 | 1900円+税 | ISBN | 9784525520137 |
ページ数 | 222ページ | 判の大きさ | A5判 |
本書は医学部や看護学部の学生を対象に書かれた生命倫理全般の入門書である。著者が実際に看護教育を行ってきた経験から書かれたというものだけあって、非常に明快でわかりやすく、難解な哲学的用語はほとんど用いられていない。そのため学術書が相手だと気負う必要はなく、ちょっとしたドキュメンタリー番組を見る感覚で読むことが出来る。しかしわかりやすいだけでなく要点はしっかりと押さえた作りになっているので、初学者はこの本の招待によって生命倫理の世界へと簡単にしかも確実に足を踏み入れることができるだろう。
本書は全六章と付録から構成されているが、第一章「生命誕生と医学の介入」、第二章「生を絶つことへの医学の介入」、第三章「死への医学の介入」というように、それぞれの章が、人生における重要な事柄と医学との関わりにそって配置されている。読者は通読することで誕生から死に至るまでの、人の命の全体に医学と倫理学が深く関わっていることを理解することができる。また本書のもう一つの大きな特色は本論を補足する具体的な事例の多さ、図表やデータの充実にある。たとえば安楽死の項目では、十一の裁判事例が挙げられており(たいていの入門書では多くとも三例ほどである)、読者は現実の社会で安楽死がどのように扱われてきたかを、科された量刑などからもより具体的に知ることが出来る。また臓器移植の章では、実際に配布されている「臓器提供意思表示カード」、また巻末の付録には厚生労働省策定の脳死判定実施マニュアル(抜粋)、その他にも日本尊厳死協会が発行する「尊厳死の宣言書」が付されているなど、実際に使用されている資料が多く掲載されており、読者はまさに生命倫理が必要とされている現場の実際の空気を感じることができる。 なお初版は2001年の発行だが、すでに改訂第三版が出版されるなど、時代の変化にも敏感に対応した書である。独学用としても講義等での教科書としても非常に使いやすい一冊である。