生命倫理関係
[ 生命科学の冒険 ]
青野由利
分野 | 生命科学 - 入門 | 難易度 | 初心者向け(教養課程学生向け) |
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出版社 | 筑摩書房 | 発行年月 | 2007年12月 |
値段 | 760円+税 | ISBN | 9784480687746 |
ページ数 | 190ページ | 判の大きさ | 新書 |
ちくまプリマー新書は中高生を主なターゲットにして2005年に立ち上げられた新書のシリーズであり、本書はそのうちの一冊として2007年に発行されたものである。最先端の生命科学の基礎知識とそれらにまつわる倫理上の様々な問題が、わかりやすい整理のもとに紹介されている。本書は他のどの入門書と比べても非常に読みやすい書となっているが、同時に現代の生命科学技術の重要な内容や論点を余さず丁寧に解説してあるため、学部生や初学者がこうした分野に興味をもってもらうための入り口として高いユーザビリティをもった入門書である。この一冊ですべてをカバーするような教科書ではないが、全編を通じて極めて易しい筆致で書かれており、挿絵なども多数用いられていることから、授業時にその場で簡単に読める副教材としても勧められる一冊である。
本書は四つの章から構成されている。第一章は「生命の始まりの科学 -生殖」として、体外受精や代理出産などの産むことと生まれることについての問題が扱われている。挿絵による論点のまとめは、とてもわかりやすく理解の助けになる。第二章は「生命を複製する - クローンと再生医療」であり、ペットのクローン作りから美味しい牛肉の量産、ES細胞研究に懸けられた期待に至るまで、クローニング技術がもたらすメリットとデメリットが丁寧に説明される。第三章は遺伝子についてで、ゲノム解読のもつ意味と遺伝子情報を解読することのもたらす未来像が、こちらも具体的な記述に基づいて解説される。最後の章は脳科学についてのもので、飲むだけで幸福感をもたらす薬や脳内の電気信号と自由意志の関係などのやや難しいテーマがわかりやすく紹介されている。 なお本書では各章の冒頭に生命科学を扱った漫画からの象徴的な一コマが置かれている。たとえばクローンと臓器移植を扱った作品などであるが、本書とあわせてそれらの漫画を通読することも、生命倫理の諸問題をより身近なものとして考えるきっかけとなるだろう。