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生命倫理関係

[ 先端医療のルール ]
橳島次郎

分野 生命科学技術 - 入門 難易度 初心者向け(教養課程学生向け)
出版社 講談社 発行年月 2001年12月
値段 700円+税 ISBN 9784061495814
ページ数 222ページ 判の大きさ 新書

本書は発達がめざましい最先端の医療技術研究に焦点を当て、その現状と倫理的な問題点を論じたものである。遺伝子技術などのなかなか具体的にイメージしにくい先端技術が、豊富な図表などを通じて易しく解説されるため、専門家はもちろん一般の読者にも理解しやすく、先端医療の紹介として優れた一冊となっている。

本書の特徴は、抽象的な哲学理論を極力避け、代わりに具体的な医療技術をとりまく諸外国での実状やそれと比較しての日本の政策、法のあり方を基礎にして、これからの我々に必要な倫理原則を考察している点にある。こうした実践的なアプローチは筆者が科学政策研究の専門家であることによる。筆者によれば、生命倫理とは現実の政策論である。そのため生命科学技術の倫理を考える際、その技術に対する具体的な政策をどのようにして社会全体の意志として決定するか、その政策を守らせる仕組みをいかにして定めるか、ということも重要である。従って、研究の現場で実際に先端医療技術に触れている医療従事者のみならず、政策や法の立案にかかわる者、ひいてはこの社会に暮らしそれらの政策の影響を受けるすべての人にとって読む価値のある一冊である。

本書では、「生命倫理」という言葉は「生命科学・医学の研究と臨床応用において守られるべき倫理」p17を意図して用いられており、癌告知や末期医療のような「日常医療の倫理」は扱われない。本書が扱う先端医療とは主に、移植医療、生殖医療、遺伝子診断と遺伝子治療のことを指し、本書の各章でもそれぞれ「臓器を中心とした人体」「生殖細胞と胚」「解析と組み替えを軸とした遺伝子」についての議論が取りあげられている。本書の目的は「こうした技術のすべてに共通する倫理原則の中身と、実際の研究・臨床応用の管理のあり方を一連の流れとして俯瞰する、全体の見取り図を示すこと」である。しかし本書の特色は、単に現状の紹介に終始するのではしないことにある。終章は「何を、どうなすべきか」と題され、これからの先端医療研究のあり方に対する指針が示される。特に、生命科学、医学の研究と臨床応用において、人の生命の操作はどこまで許されるか、人の体の一部をどこまで医療や研究目的で利用して良いのか、その際本人の同意取得はどこまで義務づけられるのか、対価は認められるのか、こうした重要な倫理的な問題について、本書はこれまでの日本が欠いてきた現実的で一貫した定言を行っている。