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環境倫理関係

[ リーディングス環境第5巻 持続可能な発展 ]
淡路剛久・川本隆史・植田和弘・長谷川公一編

分野 環境 - 環境政策 難易度 中級者向け(専修課程学生向け)
出版社 有斐閣 発行年月 2006年9月
値段 4,300円+税 ISBN 4641071918
ページ数 372ページ 判の大きさ A5判

これまでに発表された環境問題についての論文の中から、編者がテーマに沿って重要論文を一冊にまとめたシリーズの第5巻。第1巻『自然の権利』、第2巻『権利と価値』、第3巻『生活と運動』、第4巻『法・経済・政策』に続いて、本巻には様々な関連分野から「持続可能性」について執筆された重要論文が収録されている。既刊の著作からの抜粋だけでなく、学術雑誌といった専門分野以外の人たちが普段あまり目にしない論文集に初出の論文も収録されているのが特徴である。

本書は30の論文あるいは著作の抜粋が5つの章に振り分けられている構成である。第I節「地球環境問題」には、オゾン層の破壊と温暖化という地球規模の環境問題についての論文と、そうした問題の解決に国際的に取り組むための条約が収録されている。第II節「南北問題と環境」は、先進国と発展途上国の格差についての事例研究を中心とした7本の論文からなっている。特に、エビの養殖による東南アジアの環境破壊の問題を扱っている第9章「エビ養殖・輸入とアジアの環境破壊」は、南北格差の原因が日本にもある格好の事例を提供してくれる。次の第III節「成長と発展を問い直す」では、持続可能な開発というスローガンが掲げる「豊かさ」や「開発」の意味および目的を捉え直す試みを展開している論文が収録されている。第IV節「新しい環境政策・手法の展開」の各論文は、それぞれ予防原則や環境リスク=費用=便益の比較、環境会計など、政策や企業活動を実施ための方法論を提起している。特に、J・オリオルダン/J・キャメロン「予防原則の歴史と現代的意義」は、予防原則についての研究論文で頻繁に言及される著作からの抜粋・翻訳であるが、未邦訳なので一部でも邦語で読めるのは貴重である。そして、最後の第V節「持続可能な発展とは何か」では「持続可能な開発」の概念を解明するのに役立つ論文が収められている。特に、森田恒幸・川島康子「『持続可能な発展論』の現状と課題」は、41にも及ぶ「持続可能な発展」の定義を比較し、それらの定義が様々な複数の意味を含んでいると指摘している。

本書はリーディングスということもあり副読書に最適であるが、それにとどまらず読者が自分で専門的な学習に取り組むきっかけにもなる一冊である。