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北海道大学大学院文学研究院
応用倫理・応用哲学研究教育センター

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センター長挨拶

北海道大学大学院文学研究院 応用倫理・応用哲学研究教育センター長
宮嶋 俊一(人文学専攻・哲学宗教学講座・宗教学インド哲学研究室・教授)

本センターのミッションは、応用倫理、応用哲学、ジェンダー・セクシュアリティ、死生学に関する研究・教育を推進することにあります。これらの分野は、一見すると大変多様ですが、そこには、全体を貫く一つの基調があります。それは、「人間が生きる」ということに密接に関わるにもかかわらず、日々の生活の中では、なかなか意識的に取り上げられることのない事柄について、知の光を当てていくということです。しかもそれらは、現代において喫緊の課題としてわれわれに突きつけられているものです。こうした切迫した課題に対応することが、本センターのミッションです。  

いくつか例を挙げましょう。われわれの日々の生活のあり方は、地球環境全体の行方という大きなものにつながっています。われわれが日々頼っている科学技術は、かえって人間の生を脅かす危険性をときに秘めています。企業活動は、営利追求のみを第一とするなら、かえって当の企業そのものを損ない、ひいては社会に損失を与える場合があります。これらは日々の生活の中に気づかないうちに含まれている倫理的問題を指し示しています。こうした問題は、環境倫理・科学技術倫理・企業倫理として、応用倫理学が対応すべき切迫した課題であると言えるでしょう。  

また、脳科学やAI技術という現代の最先端の知が日常の中に入り込んでくるとき、「人間とは何か」があらためて問い直されてきます。そこでは、「人間は本当に自由意志をもった存在なのか?」「機械と何が違うのか?」といった問いが浮上してくるでしょう。ロボットやAIを、われわれは新たな知的パートナーとして認めねばならないかもしれません。これは哲学が応用的に取り組まなければならない、現代に特有の問題の一例です。  

さらに、ジェンダー・セクシュアリティを考えてみましょう。これと無関係である人は誰もおらず、日常の中でもジェンダー・セクシュアリティはつねにさまざまな仕方で社会的役割を果たしています。その働き方はきわめて多様であるはずなのに、それをめぐる特定の語られ方やふるまいが幅をきかせていくことで、知らずに偏った見方が「自然」であるかのように見なされてしまうことがあります。それによって生きづらさを感じる人たちが多くいるということが、今では少しずつ知られてきています。これもまた、身近でありながら取り組むのが難しい、切迫した現代的課題であると言えるでしょう。  

「死」と「生」に目を転じてみましょう。これと無関係である人も誰もいません。誰もがいずれは死に行く運命にあります。それなのに、死は日常の中では巧妙に隠されています。そのため、死に直面すると、大抵の人は「準備ができていない」ことに気づきます。現代では多くの人が宗教との日常的関わりを失っていますので、かつては宗教が果たしていたような、「死」を自分たちの「生」との関わりのうちで捉えていくような営みが、あらためて必要になってきています。あるいは、既存の宗教が育んできた思想を、個々人の身近な死生観へとつなぎ、噛み砕いていくような努力も必要になるでしょう。これもまた、現代人が避けて通ることのできない、肝要な問題ではないでしょうか。  

このように、これらの問題は、いずれもわれわれの日常の生と直接につながっている問題ですが、日常の中で自然に取り組み、自然に解決していくということが難しい問題ばかりです。そのため、これらの問題に対して、あらためて「知」の光を当てていく活動が不可欠となってきます。当センターは、まさにこのような活動に貢献しようとしています。  

これらの問題は、何らかの固定的な理論によって一方的に決めつけることができない問題、一筋縄でいかない問題ばかりです。そして、これらの問題は、われわれの日々の生活に関わるがゆえに、それにアプローチする際には、日常を生きる人々の実感をも無視できません。それゆえわれわれは、集中した取り組み、専門的知見の集積にとどまらず、シンポジウムや研究会を通したアウトリーチ活動と、そこからのフィードバックを重視しています。われわれの生を貫く諸問題を、外部へと開かれた活動を通して考えていく所存です。どうかよろしくお願いいたします。

本センターのこれまでとこれから

本センターは、2007年4月に「応用倫理研究教育センター」として設立されました。文学研究科思想文化学専攻の「応用倫理研究教育プログラム」が文部科学省「魅力ある大学院教育イニシアティブ」(平成18~19年度)に採択されたのを期に、応用倫理に関する研究教育を継続的に実施することを目指したものです。「応用倫理」を冠した常設の組織としては、わが国の国立大学法人で初めてのセンターです。

 その後、2008年度より、北海道大学におけるジェンダー・セクシュアリティに関わる研究教育のプラットフォームとしても機能しうるように、活動範囲を拡張しました。

 そしてこのたび、2018年4月より、「応用倫理・応用哲学研究教育センター」と改称し、新たに「応用哲学」と「死生学」を研究領域に加えることになりました。

 これまで当センターは、英文学術誌 Journal of Applied Ethics and Philosophy と和文学術誌『応用倫理』の刊行、国際会議の開催、ジェンダー・セクシュアリティ関連シンポジウムの開催などを継続的に行ってきました。今後は、これらの活動を継続するとともに、「応用哲学」と「死生学」分野においても、各種シンポジウム・研究会の主催・共催などを行っていきます。英文学術誌では、これら新分野に関する投稿も受け付けていますので、ぜひ積極的にご応募頂ければ幸いです。

 今後とも当センターの活動へのご支援を賜ることができれば幸いです。